クリニックの開業準備も進み、いよいよ開院となる際によく行われるのが内覧会です。地域の皆さんに実際にクリニックを見てもらうことで、開院後に新規患者となって頂くために大変重要なプロセスです。
そもそも内覧会は必要か?
私の個人的な意見では、開院前の内覧会はメリットがとても大きいため余程の理由がない限りやるべきだと思います。新規の開業の場合はとくに。
そもそもクリニックが開院すること自体、思った以上に地域の方々に知られていません。まして競合のいるような地域では単純に開院しても、そのクリニックの診療科目、医者の人物像や設備などが分からないため患者は受診しないのです。
よくわからないものにお金払いたくないですし、まして自分の健康に関することを任せる訳ですから納得して受診したいはずです。
全くの新規でなく、継承であっても内覧会はやるべきと考えます。医師が変わればクリニックのソフト面が大きく変わるわけですから、患者さん心理としては一度顔を拝んでから受診するかどうか決めたいと思うはずです。
内覧会をやるメリット
先述の通り、地域に知られる広告的な意味合いが強いですが、メリットはそれだけではありません。
スタッフが開院前に実際に人間を相手にして対応するので、接遇の練習になります。問題ある態度であれば、注意して改めてもらいます。
私の場合は、2日に渡って内覧会を開催したのですが、1日目に来訪者の導線が悪く余計に歩かせてしまったり待ち時間が発生したりしてしまいました。1日目の反省を当日の終了後と2日目の朝にやることで、2日目は非常にスムーズに運営できました。
そうした振り返りや話し合いをすることで、院長の統率力の強化、スタッフ同士のコミュニケーションの円滑化に寄与することでしょう。またスタッフ全体で問題を解決するプロセス(PDCAサイクル)を体験できるので、この経験が開院後に役に立ちます。
内覧会を手助けしてくれる業者さん
自分たちの手で内覧会を完遂することも可能ですが、ノウハウがないため実際に動き出すとボロが出てきて回らなくなるリスクがあります。
私は関係のある業者にお手伝いをお願いするのが無難と考えます。実際、私は以下のようにお願いしました。
調剤薬局:内覧会のノボリ作成、当日のビラ配り
会計事務所:当日のビラ配り
医薬品卸業者:内覧会運用スケジュールの作成
すでにこれらの業者とは開院後にも取引をすることが決まっていたので、気兼ねなくお願いさせてもらいました。
路上でのビラ配りなどは、地域の警察に事前に届出をする必要があるのですが、それを全く知らなかったので助かったのを覚えています。
内覧会で来訪者と面談する
全体のコーディネートは誰かスタッフか業者に任せて、医師は診察室で来訪者とたくさんコミュニケーションを取るべきと考えます。
ここでお会いした方々に良いと思ってもらえれば、潜在顧客となります。
内覧会以外で直接患者さんでない人とコミュニケーションを取る機会は基本的にないので、笑顔でたくさんお話ししてください。
私は診療内容についてスライドにまとめ、クリアファイルに入れて紙芝居形式でプレゼンしていきました(だいたい10ページ前後)。
1人当たり5分前後しか面談時間を取れなかったので、効率よく情報を伝えるには単純に話しをしただけでは不十分でしょう。少ない時間にこちらの伝えたい内容をまとめたこの紙芝居作戦は、内覧会には大変有用だと思います。
その他、クリニックのパンフレットなどを作成していれば、それに沿ってプレゼンしても良いかもしれませんね。
ここで注意したいのが、健康相談を始めてしまう来訪者です。面談時間が延びるだけでなく、届出上内覧会当日には医療行為はしてはいけないので、健康相談は勇気を持って断りましょう。
事前に「今日は内覧会なので、診察はできません」と伝えれば、ほとんど問題になりません。
潜在顧客につなげる
前述のように健康相談をしてくる方はそれだけその症状に困っていて、医師であるあなたを頼っている訳なので、潜在顧客になりやすいと言えます。忘れずに開院日を伝えて来院につなげましょう。
私の場合は、内覧会当日も電子カルテを稼働させて、診療に興味のある来訪者には診察券を作成し、診察予約を取っていきました。
その甲斐あってか、開院してからしばらくは予約患者さんで外来が混み合う状態にまでなりました。
潜在顧客を作る意味で用意した仕掛けに、来訪者へのノベルティの作成があります。私は事前にパンフレットとクリニック名が入ったマグネットを用意して来訪者にお茶と一緒に配布しました。
- 診療内容をまとめたパンフレット(広告会社作成)
- クリニック名・電話番号入りマグネット(広告会社作成)
- ペットボトルのお茶(amazonで購入)
- 温かいお茶(クリニック内で作成)
事前のメインターゲットとして主婦層や高齢者層ががあったので、マグネットを冷蔵庫などに貼ってもらえれば、何となく目にするうちにクリニックのことが潜在意識に刷り込まれることを期待した方法です。
このスキームは電柱広告などで使われる手法です。
パンフレットやマグネットは、ある程度しっかりした作りのものにして、捨てられにくいようにも工夫しました。
まとめ
クリニック内覧会は、広告とスタッフ教育を同時に兼ねられる大変貴重な機会です。潜在顧客も得るチャンスなので、積極的に生かすようにしていきましょう。開催には地域医師会の承認をえる必要がある場合があるので、心配であれば医師会に相談してください。