クリニックに限りませんが、赤字とならずに経営していくための重要な指標に「損益分岐点」があります。クリニック開業を目指す上では必ず知っておく必要があり、これを計算せずにどんぶり勘定でクリニックをオープンするとのちのち経営に苦労することとなります。今回は損益分岐点の計算について記事にしていきます。
損益分岐点とは何か
経営が黒字となるための売上(ときに患者数で表現します)を損益分岐点と呼びます。設備投資を行なったり各種費用を出しても採算があう状態にある損益分岐点は、クリニック経営を考える上で必須の項目です。
医師は経営を学ばずに医学部を卒業して社会人となります。「医は仁術」であることに異論はありませんが、経営を学ぶことなくクリニックを開業し赤字となってクリニックが閉鎖されれば、クリニックを利用する患者さんや雇用したスタッフを路頭に迷わすことになりかねません。
開業前に概算で良いので損益分岐点を計算し、その売上(あるいは患者数)を確保できるか事前によくマーケティングすべきです。
孫子の言葉にも「相手を知り、己を知れば、百戦殆うからず」とあります。しっかり事前準備を行うべきでしょう。
変動費と固定費
クリニックの費用は大きく「変動費」と「固定費」に分かれます。
- 変動費:医薬品購入費、材料費など
- 固定費: 家賃、人件費など
変動費は外来患者さんが増えれば増えるほど、増加する費用のことをさします。他にも血液検査の外注委託費などがあるかも知れません。
固定費は患者数に関わらず毎月ほぼ定額でかかってくる費用のことを指します。宣伝広告費や減価償却費、リース代などもここに含まれます。
雑費についてはケースバイケースですが、一般に固定費に含んで計算することが多いようです。
変動費率と固定費から損益分岐点を計算する
最初に変動費率の計算方法を確認していきます。
私が顧問税理士から教わったのは、医業原価(医薬品、材料費)を売上の10%で概算するというものです。当院ではあまり外注検査が出ないのですが、内科クリニックなどの場合は追加で外注委託費が5~7%程度かかってくるものと思います。
すると一般的には変動費率は10~17%程度になると設定できるでしょう。
次に固定費を計算します。
これは単純に固定費に当てはまる項目を全て足し合わせます。
固定費 = 人件費+賃料+減価償却費+リース+雑費
ちなみにこの人件費のところに院長自身の取り分もしっかり入れておいてください。個人事業主の場合、税務申告では人件費に含むことはできませんが、損益分岐点の計算に入れておかないと無給状態になってしまいます。
最後にこれらから損益分岐点を計算します。
また損益分岐点患者数も計算しておくと良いでしょう。
患者単価ですが、私は開業前には余裕を持って3,500円で計算しておきました。実際にはもう少し高い値になることが多いと思います。
まとめ
損益分岐点の計算方法についてまとめました。実際に計算するときは、概算で何%に設定するべきかはクリニックによって様々だと思います。私は経営については慎重派なので、悲観的な指標を元に計算することをオススメします。損益分岐点を元にして事業計画やクリニック経営を行うので、しっかり理解しておいてください。