クリニック開業の難所の一つに、スタッフ採用があります。経験者を雇用すれば即戦力になってくれますが、一方で前の職場のやり方にとらわれ指示に従ってくれないなどのリスクをはらんでいます。今回は、経験者あるいは未経験者スタッフの採用についてまとめます。
経験者スタッフのメリットデメリット
何と言っても経験者を採用すると、すでに持っているスキルをすぐにクリニック運営に役立てることができます。即戦力となってくれるため、開業当初に起こりがちな無駄なトラブルが少なくなります。
医師が代行しやすい部門(医療系資格)は未経験者であっても院長が教育することで育てることができますしサポートすることができます。場合によっては採用を見送ることもできます。しかし、医事課業務については医師はあまり詳しくないことが多く、代行することも困難です。そのため、医事課については経験者を雇用するのには大きなメリットがあると思われます。
しかし経験者は前職のやり方に固執し変化を嫌う傾向があり、院長の指示に従わない可能性があります。院長の指示に忠実に従ってくれそうな素直で柔軟性のある経験者を採用し、自院のカラーに染めてしまうと良いかもしれません。
未経験者は基本的に勉強しなければという気持ちを持って仕事に臨んでくれる場合が多いため、むしろ開院時は献身的に仕事をしてくれるかもしれません。採用面接時にも「未経験者なのだから働き始めたらできることから一生懸命にやり、その後も研鑽に努めること」をしっかり確認しておくべきでしょう。
医療系スタッフの経験者は、経験年数に応じて給与が高額になることが多く転職されやすいため、個人的には開業時にベテランを採用するのはマイナス面が多いように感じます。
医療系スタッフ
看護師、理学療法士、診療放射線技師など、特定の国家資格を持ったスタッフについてですが、必要最低限の診療スキルさえあれば経験が浅くても戦力となります。
クリニックの場合、看護師が行う業務で最も専門性の高い技術が採血、点滴、各種注射業務ですが、新人であっても一定レベルの技術は発揮できると思われます。
看護師としての経験よりも、学生時代に接客のアルバイトや、オープニングスタッフの経験がある場合の方が開院時の戦力になるケースがあります。
新人看護師はクリニックに応募してくることはあまりありませんが、応募があった場合は看護経験以外の面も確認しておくと良いかもしれません。
理学療法士等のリハビリテーションスタッフの場合は、基本的に医師の指示のもと患者さんとマンツーマンで診療に当たるため数年間の経験はあった方が無難でしょう。
当院では最初にスタッフとなってくれた理学療法士は新社会人であり、未経験者ではありましたが本人の努力と度胸によって何とかリハビリ室を軌道に乗せました。その後リハビリスタッフも徐々に増加し、クリニック内の一大勢力となってきました。
ある種のギャンブルではありましたが、新人であっても信じて仕事を任せることで時に大きな力を発揮してくれることが分かりました。
診療放射線技師などの検査スタッフは、CTやMRIなどを入れない限り開業時には雇用しない場合が多いかと思います。当院では開業1年で採用を始めました。こちらもクリニックレベルの診療では高度なスキルは不要であるため経験が浅い若手や、非常勤の雇用で問題ないかもしれません。
医事課スタッフ
当院は医事課3名体制で運用しています。医事課主任として経験者1名(経験年数約10年)を起用し、そのほか2名は未経験者です。
受付会計業務は未経験者でも十分に回りますが、レセプト算定についてはある程度の教育が必要となります。主任を中心に教育プログラムを作成し、未経験者に対して提供しています。これは追加雇用した際の新人教育にも役立っています。
また医療事務資格の取得についても積極的に支援しましょう(業務遂行自体に資格は不要ですが、医療事務一般について勉強してもらうことは有意義です)。
各種掲示や案内チラシは主任が手早く作成してくれましたし、新規開業の個別指導では主任無しでは上手くいかなかったかもしれません。
このように一人でも経験者がいると院長にかかる負担が大きく減りますが、一方で経験者が複数名いる場合は、指導や管理体制が確立しづらく、組織としてまとまりがなくなるリスクがあります。
まとめ
スタッフ雇用する際の経験者、未経験者に関する情報をまとめました。経験者はクリニック開業する際には、かなり役に立ってくれますが、未経験者をバランスよく配置することでむしろ組織が安定することもあります。バランスについてはクリニックによって異なりますが、経験者ばかりや勤務医時代からの引き抜きばかりで固めると逆にやりづらくなることもあるかもしれませんので注意が必要です。