開業医アネスラボのブログ

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【クリニック開業】開業前の他クリニック見学について

クリニック開業前に、クリニックが具体的にどのように運用されているか、非常に気になるところかもしれません。私も開業前は不安もあり、大手のクリニック1箇所、当院と似た業態のクリニック1箇所へ見学に行きました。実際、見学をしたことで学んだことについて記事にします。

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そもそも見学を行う意味は

通常、医師の世界で「病院見学」というと、次の場合を指すことが多いと思います。

  • 学生時代に初期研修先の病院見学
  • 研修医時代に入局先を決めるための見学
  • 先端医療に触れるための他院見学
  • 学会、研究会等に参加する際に会場として見学

つまり、若手医師の場合はリクルート的な意味合いが強く、それ以降では何らかの形でスキルを伸ばすための見学となる場合が多いのではないでしょうか。

クリニック開業前の医院見学(開院前見学)の場合、よほど特殊な場合を除いてはそのいずれにも当てはまりません。開院前見学の目的は次のような事項を知るためにあると思います。

  • 来院される患者層
  • スタッフ数の規模
  • 開院日、診療時間
  • オペレーションの実際
  • 大まかな診療単価、粗利益
  • 待ち時間対策
  • 問診票雛形
  • 広告戦略

明らかに見学の目的が通常のものとは異なりますので、ただ見に行って「さすがだなーすごいなー」などと感じるだけでは何の意味もありません。

この点をかつての私は勘違いしており、残念ながら2箇所のクリニック見学で得られた知見は限定されたものになってしまいました。

これから開業前見学に行かれる予定の先生は、そもそもの目的を意識して見学に行かれることをお勧めします。

大手クリニックの見学

当院の業態は「整形内科」を謳っていますが、ベースにあるのはペインクリニックですので有名クリニックを調べてアポイントを取り付けて見学に行きました。

さすがに有名クリニックだけあり、診察室も複数あり、神経ブロックの部屋も非常に大きい作りでした。診療内容も非常に専門的で、全国から患者さんが集まるような一流クリニックでした。

大変素晴らしいクリニックでしたが、私は見学に関して2つのミスをおかしてしまいました。

私が犯した第一のミスが、見学先にそういった大規模クリニックを選んだことでした。そもそも目指す業態が全く違いますし、診療に訪れる患者層も異なっている印象です(いわゆる専門外来であり、紹介患者が多数)。

第二のミスが、物珍しい神経ブロックがあり、せっかくの機会だからとそちらの見学に時間をかけてしまったことです。そもそも自院でやる予定のない治療法を見学したところで、すぐに診療には生かすことができません。そういった見学が無意味とは言いませんが、その時間で医事課スタッフに質問などをしている方がよほど有意義であったかもしれません。

しかし、見学自体が全くの無駄であったわけではなく、院長先生の人柄やスタッフを大切にする姿勢を目の当たりにすることで、生のリーダーシップやマネジメントを体感することができました。加えて複数の医師を率いて診療に当たらせるカリスマ性も見ることができたのは、忘れられない経験となりました。

地域密着型クリニックの見学

続いて見学したのが、私と同じ開業コンサルで1年先に開業した先輩クリニックです。

院長先生はペインクリニックの開業を見据えて研鑽を積む中で、整形外科的な診察も出来なければならないと単身整形外科病院で数年間修行し、開業に至ったようです。

実際、ペインクリニック目的で来院される患者さんは全体の1割程度のようで、まさに思惑が当たったようでした。私の目指す地域医療の形をある程度体現されており、見学は実際的で参考になりました。

リハビリテーション室の運用方法や、神経ブロック用のベッド選び、レントゲン撮影の勉強の必要性など、1人で考えただけでは思い至らなかったような点についてもヒントを頂き、開業時に助かったことを覚えています。

しかし実際に開院してみると、地域や患者特性の違いなどから独自に工夫していかなければならない点の方が数多くあり、結局は何事も自分で考え出さなければいけないという結論に至りました。

まとめ

私は開業前見学に2つの対照的なクリニックを選びましたが、結果的にいくつかの点で開業や経営に役立てることができました。クリニック見学を行う場合は、何も考えずに見学をしてもせっかくの時間が無駄になってしまう場合があることを意識し、目的意識を持って進めると良いでしょう。知り合いでないクリニックであっても見学の問い合わせをして門前払いに合うようなことは少ないと思いますので、勇気を持ってアプローチしてみましょう。しかし経営の仕方は十人十色ですから、闇雲に見学するよりも、あえて見学はせずに自身の信じた道を進んでいくことも重要ではないかと私は思います。