院内の決め事をする際に、当院ではスタッフ全員を集めた会議を行います。世間一般にも大小様々な会議が行われていると思いますが、スタッフからの発言がなく活気のない会議をして何だかもやもやした空気になってしまうことはありませんでしょうか。
当院でも長らく活発とは言い難い会議を行なっていましたが、発言や議題の提案に対してインセンティブを与えてみたらどうなったかについて記事にしたいと思います。
医院の運営方法あれこれ
そもそも医院の運営方法には大きく分けて2つの構造があると考えています。
それぞれの運営方法にメリットデメリットあると思われますが、ここでは詳しくは述べません。
小規模な事業所では、経営者たる院長(あるいは理事長)がトップダウンで物事を決めて全員に浸透させるという方法をとっていることが多いかもしれません。実際に当院でも開院以来長らく1.を採用し、私の一存で経営判断し問題に対してアプローチを行なってきました。
確かにスピード感を持って判断、施策実行できるため、スタートアップ時には大変有用であったと思われます。しかし、経営がある程度安定してから出てくる問題には、それぞれの立場から見ると善悪が矛盾し拮抗する場合があります。
問題を見る立場によって判断が異なる
例えば先日あったのが、医事課職員からリハビリを受ける患者からのクレームの話でした。当院ではリハビリは完全担当者制をとっているのですが、担当者不在の日に担当者を変更して受けたいと患者から申し出がありました。当院では完全担当者制をとっているため応じられないと答えると、それがクレームになったとのこと。
医事課職員からは、患者からのニーズに応えるべきで、完全担当者制を一部緩和すべきという提案でした。
一方、リハビリ職員からは、担当者ごとに施術内容は異なるし、病態をよく分かっていないスタッフが対応して症状を悪化させてはまずいだろう、ということで反発がありました。
経営者側から見れば、クレームを極力無くしたい、他のリハビリスタッフの空いている枠で対応してくれれば売上もアップする、ということから医事課の訴え通り一部緩和すべきと判断しました。
この場合、何が正解となるかは置いておいて、先ほどのトップダウンの組織であった場合には、しのごの言わず完全担当者制の一部緩和を決めるということになると思います。しかし、そうした場合、実際に対応するリハビリスタッフからの納得が得られづらく、組織への反感や反発につながってしまうかもしれません。
立場によって捉え方、考え方は違いますし、それを全員が集まった中で持ち寄ることで全員が納得できる形に落とし込むことが、組織を維持してくためには重要ではないかと思うわけです。それが真に患者志向のクリニックになっていくのではないか、と私は考えています。
当事者ではないスタッフからの提案
上の例で話し合いをしている際に、医事課でもリハビリでもない職員から、担当者制を一部緩和する際に一定の障壁を設けるべきではないかと提案がありました。
すなわち担当者を変更してリハビリを提供する前に、医師の診察を受けた上で、どうするか判断してはというものです。確かに誰でも彼でも担当者の枠を超えて施術を受けに来てしまうと、本来の担当者制の前提が崩れてしまいます。そのために医師ブロックをしようという話です。
正直、私自身の仕事量が増えるので少し嫌だな、と感じてしまいましたが、これも私一人では出てこないであろう貴重な意見であったと思います。また、当事者である医事課やリハビリからは、提案しづらい内容だったかもしれません(当事者の仕事を減らすために院長に仕事をさせる形になるため)。
そういった意味でも、第三者的立場の人間からの発言は貴重だと思います。
ボトムアップの組織が生まれやすくするには
私自身は3年目の法人化から、組織をより強靭化するため、スタッフ全員を巻き込んでクリニックを運営するため、ボトムアップ型経営を目指しています。
最終的には経営者が責任を持って判断しなければならないため、完全なボトムアップ型にはならないと思いますが、広くスタッフからの意見を聞くように努力しています。
そのためには話し合いの場で
- スタッフ一人ひとりが当事者意識を持つこと
- 発言することが推奨される空気感を出すこと
- 発言することが非難されるどころか評価される仕組みを作ること
が重要であると思います。
1および2については、個人面談(当院では年2回の賞与支給前に行なっています)で繰り返し繰り返し口頭で説明しています。また、会議の場などで実際に発言があった際には、自らの手を止めて話を聞くようにしています。間違った発言であっても頭ごなしに否定せず、一旦話を受け取るようにしています。
3については、表題にもある通りですが、インセンティブを設けるようにしました。具体的には、個人面談での業務内容の評価をする際に、発言の回数や議題を提出した回数を記録しておいて、それが直接昇給や賞与額に反映される仕組みを構築しました。
最初は金銭がモチベーションの源泉になってしまうのかもしれませんが、繰り返し発言をする、あるいはしようという態度になれば、貴重な一人ひとりの意見が汲み取れるようになるのではないかと考えています。
そうしてボトムアップ型組織に進化できるのであれば、それは有効な人的投資であったと思えるでしょう。
まとめ
最後に表題の回収ですが、スタッフが院内会議で発言することに対してインセンティブを与えるようにしたら、スタッフからの議題発出や発言が増えて活発な討論を行えるようになりました。
インセンティブはあくまできっかけに過ぎず、発言が容認される組織作りが何より重要ですので、ご参考にしていただけたら嬉しいです。
今後もより強いクリニックを作っていくために様々な施策を実行していきたいと思います。